先日の中学校での性教育講演の感想文を読んだ。
みんな、すごい。それぞれ、理解度は違うものの、それぞれの興味の範囲で内容をピックアップして感想に書いているが、それが、ちりばめたトピックにうまく分散している。
1年生4クラス、3年生5クラス。今回、それぞれ直後の「帰りの会」の短時間しか記述時間を取れなかったとの話だが、みんな、自由記述で一生懸命書いてくれていた。…ので、読むのも大変だが、読み応えアリ。笑いあり、感心あり。
感想文によく挙げられていたトピック(結果的に、これが全体像)
(話の内容 … 感想文の例)
- 「お坊さんは悩みや苦しみを抱える人(あなた)の味方」 … 「霊を慰める人と思っていた」など
- 「次代をより良くするために授業(教育)がある」 … 「今の大人社会を変えていきたい」など
- 「生」と「死」は別々のものではないこと … 「驚いた」など多数
- 「いのちを大切に」ってどういうこと?の問い … 「答えきれなかった」など
- 「必ず死ぬから『今』がある」こと … 「言われてみればその通り」「死にたいと思っていた」など
- 「いのちはずっと繋がっている」こと … 「生まれてから死ぬまでが生だと思っていた」など
- 「性の話は、いのちの話、私が生まれてきた話」 … 「エロ/気持ち悪いと思っていた」など
- 「思春期の体と心の変化はいのちをつなぐ準備」 … 「気持ち悪いことと思っていた」など
- 「体と心の変化には男女差、個人差有り」 … 「友達と違っていて悩んでいた」など
- 「異性への関心、性指向も男女差、個人差有り」 … 「友達と違っていたけど安心した」など
- 「相互信頼と相互尊重あっての彼氏・彼女」 … 「好きだけじゃヤバイ」など
- 「したいこと、したくないことは話し合うべき」 … 「自分勝手でした」など
- 「こどもは作るのではなく、『授かる』こと」 … 「確かに私は親の持ち物ではない!」など
- 「望まない妊娠・中絶/不妊の苦しみ」 … 「簡単な話じゃないことがわかった」など
- 「避妊に100%は無いこと」 … 「驚いた」「知らなかった」など
- 「子供を育てる覚語と責任」 … 「考えていなかった」「まだ無理だ」など
- 「男性側の意識と責任」 … 「男は関係ないと思っていた」「男任せにできない」など
- 「中絶は本人も、する人(医師)も深い傷を負う」 … 「医師のことは考えていなかった」など
- 「胎児も中絶時に逃げようとすること」 … 「生まれてなくてもいのちなんだ」など
- 「中絶を選択せざるを得なかった場合の考え方」 … 「望まない妊娠は避けたい」など
- 「一人で悩まず、相談できる大人を」 … 「信頼できる大人がいない」「探したい」など
項目がすごく多いように見えるが、同じ話の中での表現差。それぞれ、気に入った部分を選んで記憶していることが伺える。この分野での講演の師匠、岩室紳也先生の経験則から「短い話題をつなぐ」のが子ども達には聞きやすいということは教わっていたが、たくさんすぎると聞けないのでは?との心配は無用だった。子ども達は、自分が今聞きたいことを選択して記憶する。興味のない分野は、話者がどうがんばっても難しい。話そのものに興味を持たす必要がある(至難…)。
全体への感想としては
- 「今を精一杯生きる」を実践したい
- 今までも性教育は受けてきたが全然違う切り口でよかった
- ストレートでわかりやすかった
- 性と生を考える必要性がわかった
- 生きることと死ぬことを真剣に考えようと思った
- いのちを大切に…の意味を考えようと思った
- 将来役立てます
- 保健の授業よりわかりやすかった
- 性に関心はなかったが、避けて通れないと思った
- 言葉が難しい割には理解できた気がする
- どちらかというと「生」の話だった
少数意見、番外編
- 知らないことばかりでつまらなかった
- 気持ち悪くなった
- 意外と面白かった
- 「死ぬ」を説明できないので「死ね」って言うのやめます
- なかなかいい話だった
- がんばってください応援してます
- 他の中学校の生徒にも話してあげてください
- なんでパソコンに触らずにスライドがうごくの?
話す方としては精一杯どころか、いっぱいいっぱいだったが、感想文だけみると、ものすごくいい話のように見えてしまう。これは恐ろしいことでもあるが、こういう話を本当に聞いたことがないのだと思うと、それも恐ろしい。
いのちの部分の話、性教育としては珍しいかもしれないが、お坊さんとしては「当たり前」の話で、おそらくどのお坊さんでもできるような話。当たり前すぎて、わざわざ話さないのかもしれない。どれだけ、子ども社会とお寺、仏教が乖離してしまっているか、猛省。恐らく、保護者世代でも初耳なのではなかろうか…。
田舎の中学生は純粋…に見えるが、基本的に、感想文は書きやすいトピックで当たり障り無く書く。優等生的な回答がほとんどだ。だが、いじめられた経験、今いじめにあっていること、死にたいと思うこと、最近死別の縁にあったことなど、記名で担任に見られる事も覚語の上で相談を書いている子も居る。これらは、質問を書いている子らと共に、学校宛に封書で返事を届けたい。(果たして検閲されずに届くのか?)
折角、学校が持っている性教育の時間に割り込むことができる縁があるので、これは、なんとか子ども達のために活かしていく形をつくりたい。